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バスに乗るのが怖かった

バスに乗るのが怖かった。

一度バスに乗ってしまうと、もうそれきり、どこか遠くの知らないところへ連れて行かれるような気がした。だから、随分大きくなるまで一人でバスに乗るのが怖かった。

東京では小学生でも自分で電車に乗って通学している子を見かけるから、中学生になってもバスに一人で乗るのを怖がっていたのを考えると、随分怖がりな子だったのかもしれない。

今日家に帰る途中、夫は用事があって夜遅いことに気が付いて、バスに乗るのが怖かったことを思い出した。マンションまで着いて、鍵がなかったらどうしよう。街に放り出されて心細い思いをしないといけないんだ。なんとなくそんな感覚が、遠くの知らないところへ連れていかれるのではないかという、バスへの恐怖感を思い起こさせた。

何度もポシェットの中に家の鍵があるのをたしかめ、それでも心配で、歩くたび鍵を失くしていないか、キーケースを握りしめた。

マンションの下に着いて、ポシェットの中を覗くと、ちゃんと鍵が入っていた。オートロックのガラスの向こうかこちらかだけの違いなのに、鍵がなかったらどうしようと心配がるのもおかしい気もする。家に帰っても誰もいないということが、誰も助けてくれない心細さを呼ぶのかもしれない。

入り口の鍵を開けると、エントランスのぬるすぎる暖房が体を包んだ。ポストから不在票を取ると、これ以上見知らぬ街に吸い込まれないよう、部屋へ急いだ。

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