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それは脇役でも主役でもない力強いなにか

女の子だからか、あまりヒーローに憧れた記憶がない。でもどちらかといえば、やはり主役のほうがいいような気がする。なにより目立つし、得な感じがする。

幼いころはとくに強い願望もなく、なんとなくそんな風に考えていた。

 

この頃、物語のなかの登場人物を考える時に、当然のように魅力的な主役とは違った、その他の人びとの魅力について、考える。

たとえば私は『アンパンマン』が好きなんだけど、アンパンマンになりたいかといえば、別になりたくはない。

それはやなせさん自身がアンパンマンを『カッコ悪い正義の味方』と言うように「カッコいいヒーローじゃないから」という理由ではない。

 

アンパンマンの誕生秘話として、戦争の時に堪えがたい空腹を経験して、飢えというのはもっとも苦しいことだから、アンパンマンは自分の顔をちぎって食べさせ空腹を満たすことで人を助けるのだ、という趣旨の記事を見かけたことがある。

その記事を読んでなんとなく気になり買ったやなせさんの本には、正義のためと信じて行われた戦争と、敗戦以降の逆転した正義を目の当たりにした体験、そういう著者の経験からくるやなせ流の思想について、書かれている。

 

正義のための戦いなんてどこにもないのだ。

正義はとても不安定なもので、ある日、突然逆転する。

アンパンマンの遺書』

悪人を倒すことよりも、弱い人を助ける。

ぼくが望む正義は、そんなに難しいことではないのです。

『人生の歩き方』

アンパンマンは、自分の顔をちぎって人に食べさせる。

本人も傷つくんだけど、それによって人を助ける。

そういう捨て身、献身の心なくしては正義は行えない。

りぶる』『わたしが正義について語るなら』

  

共感できるところがありながら、それでもアンパンマンに憧れることがないのは、私が責任の持てないことはしたくないタチであること、そしてきっと不特定多数の人に対して自分が無条件に献身的に正義を遂行できる気がしないことからくるのだと思う。

そこへ来てこの頃、より気になるキャラクターは、ジャムおじさんやバタコさんである。

私はアンパンマンのように、お腹が空いて困っている人たちをすべて助けられる自信はない。でも、それをやろうとするアンパンマンを応援し支える役なら、なかなか向いていると思う。

 アンパンマンは自分の正義を遂行するため、自分が傷ついても人びとを助けるために飛んでいく。でもそれは、ジャムおじさんやバタコさんが工場や、ときにはアンパンマン号などでどこへでも出向いて、アンパンマンをバックアップするからできることなのだ。

彼らはとても地味だしカッコ良くもない。決して主役ではないし、誰かに憧れられる存在でもない。でもアンパンマンをはじめその世界にとって欠かせない。そういうキャラクターに強く惹かれる。

こういうキャラクターはアンパンマン以外でも見ることが出来る。

 たとえば「鉄腕アトム」のお茶の水博士。「ゲゲゲの鬼太郎」の目玉おやじ

それは脇役でも主役でもない、力強いなにか。

 

私のなかに正義があり、それを遂行するとするならば、きっとそういう決してヒーローではない、多くの人を救うわけでもない、だけど、その世界で戦うひとを全力でバックアップする人。

そういう役回りに無性に惹かれる自分に気づいて、それこそが自分の正義でありヒーローなのかなぁと思った。

 

やなせたかし 明日をひらく言葉 (PHP文庫)

やなせたかし 明日をひらく言葉 (PHP文庫)

 

 

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