すっとこどっこいしょ

京都に来てからというもの、笑いの沸点が低くなった気がする。元々こんなに笑う人間ではなかった。どうしてこうなってしまったのだろうと、自分でも思う。

先日も、ふらっと入った焼肉屋で延々流れていた演歌とも歌謡曲とも知れない曲がやはり可笑しくて、肉どころではなかった。

他の部分はまるっきし覚えていないが、女の人が軽快に「すっとこどっこいしょ〜」と歌う曲のせいである。

あまりに楽しそうに「すっとこどっこいしょ」を繰り返すものだから、良人と友人と三人で当然の如く、こんな話になった。

「で。『すっとこどっこいしょ』って、何」

「さあ。『すっとこどっこい』ならよく聞くけど」

「それにあれは多分『すっとこ』と『どっこい』だよね」

「『すっとこ』『どっこいしょ』? いやいやいや......」

あまりに気になったのですぐに『すっとこどっこい』について調べることにした。

「すっとこどっこいとは元は馬鹿囃子の囃子言葉で、相手を侮蔑して罵る言葉である。馬鹿野郎の類いで、同様に目下の者がミスしたときに使用することが多い。すっとこどっこいの語源は諸説あるが、『すっとこ』と『どっこい』の組み合わせという点は共通している。『すっとこ』は「裸体」、『どっこい』は「どこへ」の意で、裸同然の格好でうろつく者を罵ったところからきたという説などがある」(日本語俗語辞書引用)

「ほおー」

顔を見合わせ三人、頷きながら焼いた肉を口へ運ぶ。

「となると。『すっとこ』と『どっこいしょ』になるわけだけど」

「そもそもすっとこどっこいって共通語? 江戸っぽいイメージがあるけど」

「確かに。てやんでえ、とか」

「べらんめえ、とか」

「というか、すっとこどっこい自体あまり使う人見ないけど」

「まあそうだね」

そんな話をしている私たちを置いて、すっとこどっこいしょは次の曲へと移っていく。

私は、活きのいいオヤジさんが町の通りでぶつかってきた小僧なんかを相手に威勢よく「ばかやろう、お前ぇどこに目ぇつけてんだ、このすっとこどっこいしょが」と言っている姿を思い浮かべては一人たのしくなっているのをバレないように、網の上のこてっちゃんを黙々とひっくり返した。

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