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月を詠む歌

今読んでいる「日本文学史序説」(加藤周一著/ちくま文芸文庫)が面白い。

 

文学というものはその国の文化や性質の反映であって、当然ながら国や時代によるそれぞれの特徴があるのだ、ということを実感できる名著である。

(長い歴史の間、断絶なく同じ言語によって文学が持続的に発展し現代に至る例は世界的にも少ない、という部分で注目してみても、私たちは日本文学の歴史とこれまでの発展を誇れるように思う)

この本の中に、「平安時代の歌にはおどろくべき素材の一致があり、春夏秋冬、恋、旅、月の歌は限りなくあるのに、星の歌は極めて少ない。また当時の歌人たちはみな、唐の詩人たちのように戦争や貧困や腐敗した政治への憤りを歌おうともしなかった」という内容の文がある。

摂政時代の文学的美的価値は「もののあはれ」(日常とかけ離れたものに接した時の情趣や哀愁)であるから、そういう文学的傾向が全体として現れるのも自然なことに思える。

今となっては時代全体で同じような美的感覚を共有することは難しく思えるが、平安人が「もののあはれ」を通して当時を見ていたのだろうことを歌を通し時を超え垣間見ると、非常に味わい深い。(まぁ今の歌人達(ミュージシャン?)が相聞歌がやたら多く社会不安や政治などを歌ったものが極端に少なかったりするのはそこらへんの血筋なのかも?しれないですね)

 

先日の皆既月食のときに、日本文学にある月にまつわる話を書こうかと思ったけれど、とくに月蝕を見ながら歌を詠んでいたわけでもないので音楽の話を書いた。

しかし日本文学史序説を読んでいると、やはり何か月の歌の紹介でもしておいた方がいいような気がしたので、万葉集の中から月にまつわる一番好きな歌を紹介したい。

 

『あしひきの 山より出づる 月待つと 人には言ひて 妹待つ我を』 作者未詳 (万葉集 巻12・3002)

「山から出る月を待っているのだ」と 他人には言っておいて、あなたを待っている私だ



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